ご夫婦間、家族間、職場のコミュニケーション問題をよく見聞きしますが、改善には日々の努力と積み重ねが要ります。
日本人は「空気が読めない」という表現で、周囲や相手の状況を察しない人をけなしますね。空気を読むというのは、人の気持ちを察したり、「こういう状況下では、一般的にこういう言動をとる」という情報を長い間に学習した結果習得される能力です。 日本はお互いを察し合い、支えあい、非言語的な行動(表情や声の調子、おじぎなどの社会的な手がかり)を頻繁に用いる社会なので、「空気を読む」ということが当たり前であり、不可欠な技術とされています。おまけに「沈黙は金なり」だし、多弁は嫌われるんですね。一方、文化や地域により、人の社会行動というのは異なります。
雑多な文化的価値観と個人主義が混在しているアメリカでは、「空気を読んで」と期待すると、失望を繰り返すことになるでしょう。何事に関しても言葉を介して表現するというのが、コミュニケーションの基本です。いやだと思ったら、“No”と言う。だまっていれば “No”という気持ちを察してくれるだろうというのは、甘えなんですね。だまっていては、「何を考えているかわからない。親しみがわかない」と思われる恐れもあります。自己主張能力、意志伝達能力がなければ、大人としてやっていけません。
国際結婚カップルは特に、相手に気持ちを察してもらうということを期待するのは無理です。外国人配偶者に対して、「こんなことまでも口に出さないととわからないのか」というショックと残念さのようなものを感じている日本人は少なくありません。そのため、英語力不足の国際結婚者は、慣れないアメリカ暮らしのストレスに加えて、夫婦間のコミュニケーション問題という大きなハンディを抱えています。心配や不安があるとき、言葉でうまく言えないので、イライラをぶつけて相手にそれを察してもらおうとしても、関係が悪化するだけです。少しずつでいいですので、気持ちを話し、具体的にどういう助けが欲しいのかを相談しましょう。
相手が日本人でも外国人でも、どのような結婚生活を望んでいるのか、具体的には相手にどのような役割や言動を期待するのかをはっきりさせることが重要です。「もっとロマンティックにして」と言っても、相手はわかりません。具体的に「週末には2人でゆっくりとディナーを食べたい」「お誕生日や結婚記念日には花束とカードが欲しい」などのリクエストを伝えます。「どういうときに愛されていると感じるか」には、かなりの個人差があります。それをわかっているつもりでも、勘違いということもあります。相手が何をしたら喜ぶのかを聞き、それをしてあげることにより、暖かい関係の土台が生まれるかもしれません。